memoriae8981

北の都にかつてあった、ある女子寮の記録と思い出

35 寮の中庭の白梅のこと

 2月も半ばを過ぎれば、寮の中庭の白梅にもちらほらと白い花が咲いた。北陸では、2月半ばは一番雪深い頃である。ぼたぼたと降る重たい雪が、花に枝に積もるのを、居室の窓から眺めていた。あの頃はよく窓から外を眺めていたっけ。

 昨年春に静かにその歴史に幕を下ろした寮だが、もう取り壊し工事は済んでしまったのだろうか。あの白梅の木も、建物と一緒に撤去されてしまったのだろうか。あの中庭には他にも、管理人兼ボイラー技士のおじさんが時々世話をしていた草花も植わっていたはずだが、それも全部なくなってしまったのだろうか?